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レビュー)川崎 vs 名古屋~良い方向に転んだ真っ向勝負~

名古屋(H)3-0川崎(A)/豊田スタジアム/2019.8.10
得点者(名):和泉竜司、和泉竜司、前田直輝

いやー、勝ちましたね!しかも、川崎から3点。クリーンシートで。

おかげで良いお盆を過ごすことが出来ました。(といっても、嫁実家のTV前に鎮座していただけですがw)

川崎と実力差があるわけではなく、すべてがうまく名古屋の良い方向に転んで掴んだ勝利でした。もちろん名古屋の成長もあるわけですが、川崎の調子の落ちている部分も多分にあった試合でした。

これからも厳しい戦いが続きます(松本、横浜FM、FC東京…)。これからさらに勝利を重ねるために引き締める意味で、紙一重で良い方に転んだという視点で川崎戦をまとめます。


【良い方向に転んだ紙一重ポイント】
  1. 前田過労死システム
  2. 川崎の間受けに特化したスタメン
  3. 名古屋のビルドアップ隊と中村憲剛

スタメンとダイジェスト

名古屋は4-4-2に戻し、CBとして藤井陽也がスタメン。

川崎は4-2-3-1。大島がアップ中に出場回避ということで、山村に変更になっていました。

こちらは、22節 川崎戦のダイジェスト。0秒でスタメン出ます


良い方向に転んだポイント①名古屋組織的守備

この日の名古屋の組織的守備はプレスラインをセンターライン10m前に設定し、ミドルサードでコンパクトに守るものでした。そしてこれが、前田直輝過労死システムでした(下図)。よく耐えてくれました!

まず、川崎のボランチがCB間におりてビルドアップする際に、右SHの前田直輝が1列上り、川崎のビルドアップ隊と数的同数を作ることで規制をかけます(図中①)。

この日の名古屋の守備はハーフスペース(HS)をSBが埋めて、サイドはSHがプレスバックするというように決めていたようです。そのため、前田はカバーシャドウで川崎SBの登里を消しながらCBの谷口に寄せていきます(図中②)。

すると当然のように中間ポジションの貴公子・阿部ちゃんに谷口からボールが入り、登里にボールを落とします。「カバーシャドウ、意味ないじゃないか!」という声が聞こえてきそうですが、ここまでは織り込み済みです。前田直輝がプレスバックしてサイドの登里をマークに行きます(図中③)。

このように前田は過労死してしまいそうなほど、谷口と登里と阿部の3角形の中を走り回ります。それもこれも”SBの宮原がサイドに釣り出されてHSのチャンネルが広がるのを防ぐ”という多大なるご利益があるためなのです(図中④)。

このシステムは、川崎の2列目(憲剛、阿部、脇坂)にHSでポジション優位を取らせないために大きな効果を発揮しました。

逆サイドもHSは吉田、サイドは和泉と守備レーンは比較的しっかり分かれていました。和泉が最終ラインに下りて5バック気味になった場面も見られたと思いますが、これはサイドに吉田が出るのではなく、和泉がプレスバックするという決まり事が徹底されていたためだと思います。

この守備の仕方が良い方向に転んだポイント①です。

裏を返すと、良い方向に転ばないように、川崎が対処出来なかったとも言えます。例えば、谷口がドリブルで持ち上がって、前田を食い付かせることが出来れば、プレスバックが遅くなります。また、登里がもっとDFラインぎりぎりに位置取りすれば一発で裏を取れますし、宮原をサイドに引きずり出すこともできました。

そこは川崎の幅取り役がSBに固定されていてサイドのレーンを1人で受け持たないといけないとか、谷口の調子であるとか、裏抜け要員がいなかったとか、という要素が複合して、この結果になりました。紙一重で水を洩らさなくて良かったと思います。

良い方向に転んだポイント②川崎の組織的攻撃

川崎のスタメンを見て、「なんて賢そうな選手並べてきたんだ。名古屋相手にボール握り倒すつもりのガチ勝負挑んできたな」と恐れおののいていました。

しかし、蓋を開けてみると裏を取ったり幅を取ったりという、流動性が低いために少し停滞していました(所謂、悪い時の名古屋)。

2列目の3人(憲剛、脇坂、阿部)はDF-MFライン間の良い位置で受けるのですが、DFラインの裏に抜ける動きをする選手が少なく、名古屋のブロックを崩すことが出来ていませんでした。

また、川崎SBは幅取り役に固定されており、かつ、裏に抜けるような深さにいないので、さらに流動性を下げていました。特に、車屋が右SBに入った前半は、幅取り役なのに利き足の左で持つので、中に切れ込む形になり、縦へのスピードが出ない要因になっていました。

後半は、車屋が左SBに入り、斎藤学も入ったので幅を使う意識も増えていました。しかし、名古屋のSBが釣り出される場面は数回で済みました。

ミドルサードでブロックを形成する守備を仕込んできた名古屋に対し、間受け役ばかりで、裏抜けや幅取り役が不足したスタメンが名古屋に対し良い方向に転んだポイント②でした。バランス大事。

良い方向に転んだポイント③名古屋のビルドアップ

川崎戦といえば、ネットに憲剛をつけられて、ビルドアップが機能しなかった昨年の試合を思い出す人も多いと思います。

良い方向に転んだポイント③は、まさにその部分の優位性をひっくり返せたことです。

名古屋のビルドアップ隊は2CHと2CBの4人に対し、川崎は中村憲剛が1列挙げて、2トップでビルドアップを阻止してきます。まず、4対2が作れているために、守備力の高い川崎の憲剛、悠のコンビでも殆どビルドアップを阻害することが出来ていませんでした。

名古屋のビルドアップ隊4人は配置は自由で、CHがCBの中央に下りるのも脇に下りるのも、どちらのCHが下りるのかも自由です。やり方が決まってません。

更にシミッチとネットです。そう簡単に取られるわけありません。藤井陽也は18歳ですが落ち着いていますし、さらには成長した中谷進之介です。

名古屋の2点目は、中谷のドリブルでの持ち上がりが起点になっていますが、そのドリブルの始まりは憲剛をひらりとかわすことから始まっています。めちゃ成長感じます。頼もしい。

試合の序盤で「出来る!!」っていう自信がゲームを楽にしたのではないでしょうか。

また、名古屋は組織的攻撃時に、前4人がペナ幅に密集します。そのために川崎MF陣は前に出ずらい構造になっています。前に出れば名古屋攻撃陣が間で受けて前を向くをという良い循環が生まれていました。

川崎とすれば、「暑いし、4-4ブロックの間受けを囲んでボールを取り切ろう」という狙いがあったと思うのですが、この日の名古屋はジョー、シャビエル、前田、和泉共に絶好調で良くボールが収まりました。その点も誤算だったのではないかと思います。

良い方向に転んだ紙一重ポイントまとめ

  1. 前田過労死システムで、守備タスクが半端なかったが、谷口には深追いし過ぎず、登里にはプレスバックを頑張って、破綻しなかった。
  2. 川崎の間受けに特化したスタメンにより、ボールを握ろうとしたことが裏目に出て、攻撃が停滞した。
  3. 名古屋のビルドアップ隊が成長したことで昨年の借りを返し、自由にボールを進めることが出来た。
全体的には川崎が真っ向勝負を挑んできてくれたことが、名古屋としては良い方向に転びました。常にJ1は紙一重です。

松本戦プレビュー

ここで、松本戦のプレビューを少しだけ。

松本戦はサイドのレーンにシャドーとCFとWBが入ってくると予想されるため、HSのカバーの仕方は別の方法が必要でしょう。また、松本の守備時はリトリートだと思うので、引いた相手にゴールをする必要があるかもしれませんし、カウンター守備が大事になってきます。カウンター守備は、最近改善されている気がするので、あまり心配していません。

カギになるのは、川崎戦のように名古屋がミドルサードでブロックを作って守り、ボールを奪った後に、松本の守備陣形が整う前にゴールを奪えるか否かではないかと思っています。

移籍

出入り色々ありましたが、より若手が頑張らないといけないメンバーになりましたね。

今の戦い方だとSHが過労死してしまいそうなので、山田康太、頼んます(青木、杉森も)。

オリンピック世代は、オリンピック代表に選ばれるため各クラブでレギュラーが必須でしょう。そのため、菅原由勢や相馬勇紀も出場機会を求め期限付き移籍をしていったと思います。この1年で大きく伸びた選手しか本選出場できません(OA抜くと15人だっけ?)。山田も含めた若手から、和泉・中谷・宮原・前田のように大きく伸びる選手が出てきて欲しいものです。(児玉駿斗はどうしてるんだろ?)



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