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レビュー)名古屋 vs 仙台~散在と密集、そして阿部浩之~

名古屋(A)1-1仙台(H)/ユアテックスタジアム/2019.2.22
得点者(名):阿部浩之
得点者(仙):シマオマテ

始まりました、J1リーグ。
人生のうるおい、グランパス。
早くもバンディエラ、司令塔、闘将、ピッチ内の監督、王様、阿部浩之。

1節ですし、今回は今年はこんな感じの戦い方するんじゃないか説と阿部浩之について書きたいと思います。

まずは、1節 仙台戦のダイジェストから。

まず、このダイジェストの必見です。なぜなら、失点シーン以外すべて名古屋のチャンスという編集になってます。以前は試合内容にかかわらず、半々だった気がするんだが。DAZNの方針なのか?

今節のプレビュー記事はこちら。

戦前は、攻撃では仙台の前からのプレスに苦しんでビルドアップに苦労し、守備では引きこもってSHを下げた6バックの時間帯もあるのではないかと予想していましたが、なんてことない名古屋のペースで試合のほとんどの時間を過ごす事が出来ました。

ドローながら、まずまずの初戦となった名古屋の戦い方を、私なりにレビューします。

散在と密集

名古屋は4-2-3-1というより、4-2-1-3じゃないかと。仙台は4-4-2です。




この試合はミドルサードのビルドアップでは、ピッチを大きく使うため選手間は広く取り(散在)、オフェンシブサードの崩しの局面では、4人の鳥かご(密集)を作りながらフィニッシュの機会を狙っていました。この散在と密集で、試合の主導権を握っていたんじゃないかと思っています。

ビルドアップ時の散在

ビルドアップ時の形はこんな感じでした。

名古屋が、ミドルサードにおいてビルドアップするときに一番意識していたことはピッチを広く使う事だと思います。散在。

CB2人は、HSに陣取りそこそこ離れます。中谷も丸山も足元があるので、離れても不安は募りません!(レガシー)。普通2トップの選手は、間を通されるのを一番嫌います。よって、この状態だと、名古屋CBをそれぞれマークして、仙台2トップの距離が離れるのが嫌なので、CBの一人はトップと距離のある状態を作れます。

次はSB。SBはCBが広がった分、前に出てサイドライン際まで広がります。仙台はSHがSBを見に行きたいところですが、これまた、阿部浩之や稲垣祥や前田直輝といった真ん中を通されるのが嫌なので、寄せにくい状態があります。実際、成瀬も吉田もドリブルで持ち上がることが出来るので、ビルドアップの出口になる事が出来ていました。

仙台は、4-4-2でも中央を締めるタイプなので、敵SHとの距離が離れ上手くいっていました。一方、片サイドに圧縮してくるパターンのチームの場合はどうなるのかも、今後の楽しみです。”逆サイドのWGに一発サイドチェンジ”ってのが実装されているんじゃないかという展開がこの試合でも何回もありました。よって、片サイドに圧縮してくるチームとの対戦にも期待が持てます。(後半は仙台も圧縮してたかも)

WGもピッチの幅いっぱいに広がります。ポジショナルプレーの場合WGとSBが同レーンにいないようにする場合が多いですが、ガッツリ同レーンです。(後半は、相馬、成瀬がHSレーンの場合も多かったけど。)名古屋もポジショナルと言えばポジショナルですが、方法論が流行ってるやつとはだいぶ違う感じです。ここでも仙台のSBは絞ってHSを開けないようにすることを第一優先にするので、マークは緩目になります。

名古屋はWGが1対1になって質的優位で勝負するルートが強みなので、仙台にとっては辛い形になり、名古屋が主導権を取れる要因の一つになっていたと思います。

ここまで、ピッチを広く使うための外周の選手を取り上げてきましたが、次は中央の選手です。

CHは、基本的に中央攻撃をするために真ん中でパスを受けるようにします(当たり前か)。米本拓司はCBがビルドアップに苦しんでいる場合に、1列下りて相手2トップに対し数的優位を作りにサポートします。下りる場所はSB-CB間、CB-CB間といろいろ。ただし、苦しんでいる場合のみ。苦しんでもいないのに下がる事が無かったことが、非常に好印象でした。無駄に後ろが重たくならないってやつです。

そして、トップ下の阿部浩之は自由でした・・・おしまい。

おしまいではなく、阿部は中央ルートの受け手として、中間ポジションで受けるためにいろいろ動いていました。仙台の4-4ブロックが作る3つの四角形の中央のどこかに入ったり、CB-SB間にまで下りてビルドアップをサポートしたり。

この広くピッチを使うビルドアップにおいて中央を開けても怖くないと思われてしまったら、相手が躊躇なく名古屋のCBやSBやWGにプレスに行けてしまうところなので、第一優先としてCFやトップ下が開いていたら使うという姿勢があったのも、仙台にとっては嫌な所だったと思います。実際、終盤は阿部浩之のラストパスで、決定機を迎える場面が増えました。試合を通して狙っていたことがオープンになってきた所で実ったものと考えています。

崩し局面での密集

ビルドアップ後にオフェンシブサードまで押し込むことができると、サイドに4人で鳥かごを作ります。

名古屋はもともと足元の上手い選手が多いですし、3年の積み上げ(!?)がありますので、密集でユニット優位をつくってチャンスを伺います。

ここでポイントは3人ではなく4人で鳥かごを作る事だと思いました。4人は、名古屋の同サイドのCH、SB、WGと阿部と決まっていました。それに対し、4-4-2で同数を作ろうと思うと、同サイドのSH、CH、SBまでは確定で、「あと1人誰にする?」ってなると思うんですよ。

名古屋は鳥かごに入っていない2人のトップがゴール前にいるので、2CBと逆SBの3人で数的優位を保ちたいのが信条です。しかし、4対3の名古屋ボールの鳥かごで、ボールキープが続くと、同サイドのCBが釣り出されて出てくるわけです。すると、クロスに対して中が敵味方同数で勝負が出来ます。また、SHやCHが下がっているので、仙台のトップは孤立します・・・こうなると、ずっと名古屋のターンを実現できるわけです。



密集に加えて、逆WGのアイソレーションも決め事があるらしく(誰もいないと阿部が入ることも)、そこへのサイドチェンジも徹底していたため、仙台としてはスライドを沢山強いられ、ボールサイドに圧縮するのも難しい状態だったんではないかと思います。

「結局、ドローだけどね」という声が仙台ファンから聞かれそうですが。。。


名古屋で思う存分スポットライトを浴びてくれ

阿部浩之はバンディエラ、司令塔、闘将、ピッチ内の監督、王様、なんと表現するのが適切かわからないぐらい、すごかった。個人的に好きな選手だったけど、ここまですごいとは思わなかった。スプリント5回(出展:DAZN)で、あの目立ちっぷりというインテリジェンスもすごい。ゴールを決めて、それ以外も4回は決定機を演出しているのもすごい。すごい。すごい。

遠藤や憲剛のいるチームで、いぶし銀的な扱いを受けがちだったけど、名古屋で伝説(皮肉じゃないよ)になるような、素敵なマリアージュになる事を願わずにはいられない。そんなファーストマッチだった。「優勝請負人だからって、優勝しても出ていかないで。今からお願い。」

おわりに

散在も密集も攻撃と守備の両方を安定させると思います。散在は、攻撃時にビルドアップルートを広げ、ネガトラ時にはポジションバランスを担保します。密集は、攻撃時にはゴール前を手薄にし、ネガトラ時には相手の前線人数を減らします。前プレ、ショートカウンターと含め4局面の戦術の整備はかなり進んでいます。(よね。)

脳内変換されて、かなりいいように取っているかもしれませんが、今年は「こう来たらこう」という戦術セットが揃っている感じがします。

たとえば4人鳥かごは、「守備での前プレ後にショートカウンターばかり打っていては疲れてしまう」に対する休憩時間なんじゃないでしょうか?「前に行くぞー、ワ~」ってなってるチームメイトが多い中、「ペース落とそうよ」と気の利いた間を取る阿部浩之もいます。

今年は夏に疲れないぞ~!!走り込みだけじゃないんだぞ、コラー!!


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